ソウル市内を流れる川と言えば今でこそ漢江(ハンガン)ですが、李氏朝鮮の時代(1392年〜1910年)、その首都・漢城(現ソウル)を流れる川は清渓川(청계전、チョンゲチョン)でした。

現在のソウルの中心部を流れる清渓川は、今でこそきれいに整備されて市民の憩いの場となっていますが、一昔前まではどぶ川として厄介者扱いされていたと言います。このため清渓川は、いったんは1950年末に覆蓋工事によって地下に姿を消します。その後、2005年になって復元されたのが現在の川の姿です。

清渓川は、明洞(ミョンドン)や仁寺洞(インサドン)などからも歩いて行ける立地の良い場所にあります。そんな清渓川の今と昔について紹介します。


人工の川として復元された現在の清渓川


清渓川は、ソウル市の中心部を西から東へ横断するように流れている小さな川です。

現在の清渓川の始点は、光化門駅近くにある「清渓広場」にあり(Google地図)、そこから東へと流れています。東大門(トンデムン)の辺りで南下し、中浪川(チュンナンチョン)を経て漢江へと注いでいます。この川の総長は約5.8kmほどです。

街中の川らしく、川沿いにはさまざまなお店があり、始点の清渓広場では様々なイベントが開催されたりしています。川沿いに沿ってゆったり歩くのも良し、腰を下ろしてゆっくりするのも良しです。

ところで、なぜこんな街中に清渓川の始点があるのでしょうか。

それは、現在の清渓川が2000年代に復元されたもので、川の始点には人工的に水を流しているからです。

復元工事前の清渓川は「覆蓋」といって川が地下に埋められ、その川の上が蓋で覆われている状態でした。さらにその川沿いの地上には高架道路まで架かっていました。

そんな中、2002年に、李明博(이명박、イ・ミョンバク)がソウル市長に当選します。
当時、高架道路は築30年で既に老朽化しており、高架道路の再建築か、または道路を撤去して清渓川を復元するかで議論になったと言います。

李明博市長は、反対もあった中で「清渓川復元事業」をスタートし、2005年に現在の川の姿へと修復しました。この成功は、彼を大統領まで押し上げることとなりました。

李朝の住民の生活拠点であった清渓川

もともと清渓川は自然河川であって、その水源は周辺の山部(仁王山、白岳山南部、南山北部の山麓)にあったようです。


そうした普通の小川であった清渓川の歴史は、李氏朝鮮時代に始まります。

李朝の初代王である李成桂(イ・ソンゲ)は、山と川に恵まれた風水的に吉相の地を新しい首都に定めます。それが漢城(現ソウル)でした。

漢城は、漢陽都城という城壁で囲われます。そして、その城内を、清渓川が西から東へ横断するように流れていました。川を境に北側を「北村(プッチョン)」、南側を「南村(ナムチョン)」といったようです。
  • 北村:現在の景福宮と昌徳宮の間の三清洞など
  • 南村:現在の忠武路、明洞など

このような都市を流れる川でしたから、その川辺は庶民たちの生活の拠点となっていたことでしょう。清渓川は、生活排水を流す下水道の役割も果たしていたと言います(参考リンク)。

しかし、大雨が来ると川の氾濫によって被害が出たようです。このため、李朝の時代には、川底に堆積した土砂を取り除く浚渫(しゅんせつ)工事や、川岸の堤防を強化する護岸工事が、たびたび行われていました

こうした土木工事に由来して、川の名称は開川(ケチョン)と呼ぶようになったのだそうです。清渓川と呼ぶようになったのは、それよりはるかに時代が下った、日本植民地時代だったといわれます。

清渓川の歴史

1394年、李成桂(イ・ソンゲ)が漢城を首都に定める

1406年、第3代王・太宗(テジョン)が清渓川を整備

1958年、清渓川の覆蓋工事(1960年まで)

1967年、清渓川高架道路を建設(1976年まで) 

2002年、李明博がソウル市長に

2003年、清渓川復元工事(2005年まで)


清渓川の歴史を知るには「清渓川博物館」へ行こう!

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現在の川の始点である清渓広場から、清渓川をずっと東へと下っていった下流側に、清渓川博物館があります。2005年にオープンした博物館です。

地上4階・地下2階の建物で、エスカレーターで4階に上ると、建物を下りてきながら古い年代から順番に清渓川に関する展示を見ることができます。

常設展示室(4〜2階)では、李氏朝鮮時代の清渓川の歴史や住民の生活の様子に始まり、日本植民地時代・朝鮮戦争を経て、その後の覆蓋・高架道路の建設の過程や当時の住民の様子、さらに2000年代の復元事業の過程を知ることができます。

企画展示室(1階)では、清渓川に関連するテーマで期間限定の企画展示が年に2、3回行われているようです。企画展示の内容は、博物館の公式サイト(韓国語)で確認できます。

清渓川博物館は、万人向けの観光スポットとは言いにくいと思いますが、清渓川の歴史や文化を知ることができる史料的な価値のある場所だと言えます。

清渓川博物館のまとめ
  • 清渓川博物館:清渓川に関する史料を展示する博物館
  • 行き方:ソウル地下鉄2号線龍頭(용두、ヨンドゥ)駅5番出口から徒歩10分、地下鉄1号線祭基(제기、チェギ)駅4番出口から徒歩15分
  • 月曜と1月1日は休業
  • 営業時間:9時から18時〜19時(季節により変動)まで
  • 無料
参考リンク:公式サイト(韓国語)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

清渓川は、もともと李朝の歴史とともにあった川で、時代を経て、現代に新しい姿として復元されました。

ソウルの中心部を訪れた際には、ぜひ清渓川に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。





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