いつの時代も大人たちが若者の気持ちを理解するのは簡単でないようですが、そんな韓国の若者たちから生まれた近年のインターネット造語があります。

それが今回紹介する三放世代、ヘル朝鮮、スプーン階級論という言葉であり、過当な競争社会・格差社会の中に生きる韓国の若者たちの心理や苦しい実情を表現した言葉です。それらは韓国で社会的な議論を巻き起こし、流行語にもなりました。

私たち家族のような日韓の国際カップルは特にそうですが、韓国で子育てをしている人たちにとって、こうした韓国社会の実情をしっかり知っておくことは大切ではないでしょうか。


「三放世代」から見る若者の心理

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2008年の世界金融危機の後、韓国では、2010年頃に若者たちの就職氷河期が始まったと言われます。その翌年、2011年に登場したインターネット造語が「三放世代(삼포세대)」という言葉です。

この言葉は、就職難の韓国社会に生きる若者世代の3つの放棄(あきらめ)の心理、すなわち恋愛、結婚、出産をあきらめるということを意味します。それは一見、将来に希望を持てない若者の心理を表現した言葉のように思えますが、そうした社会の中に自らの生き方と幸せを探そうとする若者の心理も同時に表しているようにも思えます。

この言葉はさらに発展して、就職とマイホームもあきらめる「五放世代(오포세데)」、そして人間関係と夢までもあきらめるという「七放世代(칠포세대)」といった言葉もあるようですが、その意味することは三放世代と同じだと思われます。


「ヘル朝鮮」から見る若者社会の実情

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(原本はこちら)

「三放世代」が若者らの生き方や心理を表現した言葉ならば、「ヘル朝鮮」は若者たちの苦しい実情を表現した言葉と言えるでしょう。

ヘル朝鮮(헬조선)とは、地獄を意味する「ヘル(Hell)」と「朝鮮」とを組み合わせた造語で、2015年にSNSから広がったと言われます。ところで何を地獄と表現しているのでしょうか?

日本では、韓国の若者たちの過度な受験戦争が話題にされることが多いと思いますが、大学卒業後の若者たちの就職戦争も大変なものです。若者たちが大学卒業の前または卒業後に海外留学、資格取得などを準備し、就職のための”スペック”を満たそうと努力する「就職準備生(취업준비생)」という言葉があるくらいです。もし親からの経済的援助が得られなければ、アルバイトをしながらでも就職準備をする人もいるのだといいます。

そうした親の経済力なしに韓国で大学受験と就職準備という戦争を勝ち抜くのは困難であるため、就職前に借金を負うことになる若者もいるのだとか。そのような韓国社会の実情をヘル(地獄)と言っているのですが、受験地獄、就職地獄という言葉の方がわかりやすいかもしれませんね。

韓国の人たちが就職先を国外に求め、海外移住しようとするのが多いのも、こうした過度な競争が理由になっていると思われます。


スプーン階級論から見る親世代への依存

スプーン階級論(수저계급론)も、2015年にSNSから流行した言葉で、英語の「born with a silver spoon in one's mouth(銀のスプーンをくわえて生まれる)という表現に由来するようです。

つまり、子供が生まれて口にくわえるそのスプーンの色親の経済力に依存することになるため、そのスプーンの色を社会の階級として論じたものだというわけです。親の資産・年収によって次のように階級分けがされています。


スプーンの色親の資産親の年収
金スプーン20億ウォン(約2億円)2億ウォン(約2000万円)
銀スプーン10億ウォン(約1億円)8,000万ウォン(約800万円)
銅スプーン5億ウォン(約5000万円)5,500万ウォン(約550万円)
土(泥)スプーン5,000万ウォン(約500万円)未満2,000万ウォン(約200万円)未満


親の経済力で階級が異なるというのは、大人たちにとって特別な論ではないとも思いますが、それが韓国の子供たちの考え方にも影響を与えているように思われます。というのも、韓国の小学校などでは子供たち同士が、親の職業が何かを聞き、住む家がどこを互いに尋ねるという話があります。実際に、私の子供たちも友達から聞かれた経験がありました。


まとめ

今回記事にした経済格差というのは、世界各国共通の課題だと思いますが、近年の韓国のドラマや映画には、こうした現代社会の問題を背景としたものも多くあります。

たとえば、JTBSの『SKYキャッスル』は高校生の過度な受験戦争をドラマの舞台としていました。そのドラマ監督の意図は行き過ぎた競争に警鐘を鳴らすためだったということのようですが、視聴者の親たちの中には大学受験のためにはもっとしっかりした教育を子供に施すべきだと考えた人もいたと言われます。

昨年(2019年)、韓国で公開されたポン・ジュノ監督の映画『パラサイト』も、上層家庭と下層家庭という、まさに韓国の格差社会を舞台として描いたものでした。こういった現代の韓国社会の実情を描くドラマや映画は、今後も多く制作されるものと思います。

私も、韓国で子供を育てていますので、子供の受験環境や就職環境のことは大切です。今後、そうした内容を記事にまとめたいと思っています。




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