日本では、2003年頃から韓国ドラマ『冬のソナタ』が放映され、韓流ブームに火がついたと言われます。ちょうどその頃、韓国ですい星のごとく突如として現れた女性脚本家がいましたが、それが今回紹介するキム・ウンスク(김은숙、金銀淑)です。

彼女は、2000年代・2010年代の韓国ドラマを代表する大人気の一流脚本家で、韓国ではシナリオの女王とまで呼ばれます。そのように言われる彼女の魅力は何なんでしょうか。

今回の記事では、キム・ウンスクの脚本家としての略歴や特徴、そして彼女が書いたドラマ/映画作品をご紹介します。さらにキム・ウンスクのドラマには、視聴者の印象に強く残る名言・名ぜりふが多くあり、それらは韓国で流行語になるほどです。そんな彼女のドラマは韓国語の学習にもお勧めだと思います。



キムウンスク脚本家とはどんな人物?そのドラマ・映画は?

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日本でキム・ウンスクの名前を知らない方でも、彼女がシナリオを書いた韓国ドラマを知っている方は多いと思います。『パリの恋人』、『シークレット・ガーデン』、『太陽の末裔』、そして『鬼-トッケビ』…。

これらのドラマは、男と女が恋するその舞台の中に、視聴者の心を強く引き付けるたくさんの言葉が散りばめられています。しかし、そんな彼女も、2003年に初のドラマ脚本を書いたときには、無名の存在に過ぎませんでした。

キム・ウンスクは、1973年に、韓国北東部・江原道の江陵(カンヌン)市で生まれました(Google地図)。韓半島の東海岸に面する人口20数万人ほどの町で、休みの日には韓国国内から余暇や海水浴を楽しむために多くの観光客が訪れる場所です。

彼女は子供のころから文才があったようですが、作家の道に進むために大学に入学したのは25歳になってからのことでした。彼女は、江陵市で自ら働きながら学資金を貯めたと言います。

キム・ウンスクが入学したソウル芸術大学・文芸創作科は、純粋文学を主に学ぶところで、これまで多くの詩人や小説家を始め、放送・ドラマ作家も輩出しているようです。彼女は、当時、韓国を代表する女性小説家であったシン・ギョンスク(申京淑)に憧れて、同じ大学の同じ学科に入学したのだと言います。

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大学を卒業した後には、新聞社主催の新人作家発掘公募「新春文芸(신춘문예)」に挑戦もしましたが、良い結果は得られませんでした。さらにソウルの大学路(テハンノ)で3年間、演劇の台本を書いていたとのことですが、固定収入のない生活は苦しく、帰郷も考えるほどだったそうです。

そんな彼女に大きな転機が訪れます。ドラマ制作ディレクターをしていた知人から、ドラマの脚本を書いてみないかと勧められたのです。その当時の彼女にとっては、収入が得られるということが何より重要だったようです。

そして、彼女が初のシナリオを書いたドラマ『太陽の南』(2003年)が視聴率も高く大きな成功を収めます。

続いて、ドラマ『パリの恋人』(2004年)でも大成功を収めた彼女は、名実ともに韓国を代表するドラマ脚本家として、『シークレット・ガーデン』(2010年)、『太陽の末裔』(2016年)、『鬼-トッケ』(2017年)などの大ヒット作を次々と生み出していくことになるわけです。

現在、彼女の書く脚本は回ごとに10億ウォンを超えるとも言われ、彼女のドラマへの出演を切望する俳優が男優・女優ともに後を絶たないと言われます。その大人気の脚本の内容は、外部に流出しないよう厳重に管理され、出演者もその内容を事前に知ることはできないようです。

その脚本には演技の細部まで書かれており、呼吸するタイミングまで再現を求められることがあるのだとか。それだけ脚本の段階から、彼女の頭の中ではドラマのイメージが出来ているのだと思います。

キム・ウンスクのドラマ・映画一覧
  • 2003年 太陽の南 -愛と復讐の果て
  • 2004年 氷雨
  • 2004年 パリの恋人
  • 2005年 プラハの恋人
  • 2006年 百万長者の初恋(映画)
  • 2006年 恋人
  • 2006年 愛してるから大丈夫(映画)
  • 2008年 オンエアー
  • 2009年 シティーホール
  • 2010年 シークレット・ガーデン
  • 2011年 マイ・プリンセス
  • 2012年 紳士の品格
  • 2013年 相続者たち
  • 2016年 太陽の末裔
  • 2017年 鬼-トッケビ
  • 2018年 ミスターサンシャイン
  • 2020年 ザ·キング:永遠の君主

キムウンスクのドラマの魅力は劇中の名言・名ぜりふにあり!

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(ドラマ『トッケビ』より)

これだけの大ヒット作品を生み出し続けている脚本家・キムウンスクの魅力は一体どこにあるのでしょうか?

その魅力を私が独自に分析することは難しいですが、一般的によく言われているのが、彼女のドラマの中の名言・名ぜりふが視聴者、その中でも特に女性ファンの心をつかんで離さないということです。

現実生活では出会うことのないような金持ちでスタイルの良い男性主人公が目の前に現れ、現実にはあり得ないような幻想的な舞台設定の中で、生涯言われることのなさそうな素敵な言葉を女性主人公に語り掛ける。

そんな場面は、ドラマの中の出来事だと知りながらも、現実生活の疲れやストレスを癒してくれます。

以下に、キムウンスクのドラマの劇中の名ぜりふを、私の独断的な感想とともにいくつか紹介します。こうした名言の中には韓国で流行語になったものもあるようです。

まあ、おそらく私は一生言うことも、言われることもないとは思いますが…。


「赤ちゃん、行くぞ!」(パリの恋人 第4話)


これは『パリの恋人』の男主人公・キジュが、女主人公・スヒョクに向けカッコつけて言った言葉です。

애기야 가자! (エギヤ カジャ)

「애기(エギ)」というのは、 赤ちゃんのことです。日本語字幕では「ハニーちゃん」と訳されているのもあるようですね。

要は、ドラマの男主人公が、大人の女性に「赤ちゃん(애기)」と呼びかけながら、喫茶店から出よう(가자)と言っている場面です。

つまりこれは視聴者にとって、恋人に向けて「赤ちゃん(애기)」と呼んでみたい男どもと、かっこいい大人の男性から「赤ちゃん(애기)」と呼ばれてみたい女性たちの妄想が膨らむ場面と言えるわけで、ございます。


「これが最善ですか?確実ですか?」(シークレット・ガーデン)


これは、ヒョンビン演じる若き社長が、ドラマ中で事あるごとに発する決め台詞です。

이게 최선입니까? 확실해요? 
(イゲ チェソニムニカ? ファクレヨ?)

たとえばヒョンビン社長に部下が決済書類を持ってくる。その時に、それが最善で確実なものなのかを上から目線で言う言葉なわけです。

ヒョンビンが言うからかっこいいのであって、私が部下に言おうものならヒンシュクものでしょう。この言葉は韓国で流行語になったようです。


「〜であります」(太陽の末裔)


『太陽の末裔』の主人公は特殊部隊の隊員です。そんな主人公や隊員たちが固い軍隊口調で使う言葉です。

〜지 말입니다. 
(〜ジ マリムニダ。)

このドラマは、命がけで任務を遂行する男女たちが恋愛するストーリー。そんな軍隊特有の雰囲気を醸し出すために、軍人の主人公役であるソン・ジュンギが、女医役であるソン・ヘギョに軍隊口調で自らの意思を厳かに伝達しながら、結局は恋愛しているわけです。

ただし、この軍隊での言い方は、実はもう現在では軍隊の中で使われていないそうです。だからこそ、この言葉の独特な雰囲気が大衆受けし、韓国で流行語までになりました。

ぜひ韓国語のできる方は、親しい相手に向けて、「〜ジ マリムニダ」と言ってみてはいかがでしょうか。空腹時に「배가 고프지 말입니다. (お腹がすいているわけであります)」と堅い口調で言ったら、きっと受けがいいですよ(笑)。

「すべての日が良かった」(トッケビ 第6話)


このドラマは、900年も不滅の命を持ってトッケビとして生き続ける男が主人公。その男が、運命的に出会った若き女性主人公を思って出た言葉です。

「すべての日が良かった」を意味する「모든 날이 좋았다(モドゥン ナリ チョアッタ)」という言葉は、劇中では次のような詩となって出てきます。

너와 함께한 모든 시간들이 눈부셨다.

날이 좋아서,

날이 좋지 않아서,

날이 적당해서

모든 날이 좋았다.

こらを日本語に訳すと次のとおりです。

「君と一緒にいた時間、すべて眩しかった。
良い日も、良くない日も、
普通の日も、すべての日が良かった。」

こんな言葉、いつか死ぬ前に一度言ってみたいですね。「あなた、何言ってんの」と反応されておしまいでしょうが(笑)。




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