韓国の政治は大統領制で、国民が選挙で選んだ大統領により韓国の政治は大きく変わるとよく言われます。
それだけ韓国の大統領には大きな権力が与えられているということですが、韓国の政治が行政・立法・司法の三権分立体制を取っている点は日本と同じです。
そうした韓国の政治体制は憲法によって定められており、1948年の憲法制定以来、これまで9度の改正を経てきました。
今回の記事では、韓国の政治制度をザクっと理解できるように要点を解説していきます!
【目次】
韓国の政治制度の概要
韓国は、第2次世界大戦後の米軍統治期の後、1948年に韓国憲法が制定されて李承晩が初代大統領に就任して以来、今日まで大統領に政治権力が集中する「大統領制」をとってきました。1961年に朴正熙を中心として軍事クーデターが起き、1963年に朴正熙が第5代大統領に就任してからは「独裁軍事政権」の時代が続きました。1980年代に入ると民主化を求める国民の声が高まり、1987年の「民主化宣言」後の憲法改正を経て、1988年、国民の直接投票により第13代盧泰愚大統領が誕生しました。その後は、国民の選挙により各代大統領が選ばれ、現在、尹錫悦が第20代大統領を務めています。
韓国は大統領が強力な権限を持っていますが、その政治体制自体は「行政・立法・司法」の三権分立体制を取っている点で日本と同様です。
その立法機関は「単院制国会」で、その国会議員も国民の選挙によって選ばれています。このため、大統領が所属する政権与党よりも野党が多数議席を握ることがあり、これを「ねじれ国会」といって政権運営に困難を強いられることとなります。
一方、韓国の司法制度は、日本と同様に三審制で、同一事件について「地方法院→高等法院→大法院」といった審級により裁判が行われます。大法院が最高裁判所に相当し、そのほかに憲法裁判所も設置されています。大法案と憲法裁判所の長は大統領が任命します。このうち憲法裁判所は、大統領を罷免するかを審判する弾劾法律裁判を行う役割を持っています。
(原本へのリンク)
韓国の大統領制と大統領選挙
韓国大統領の任期は5年で、現在、満18歳以上の韓国国民の直接投票により大統領選挙が5年に1度行われています。誰を大統領に選ぶかについて国民の意識も高く、大統領選挙の当日は休日になることもあり、投票率は高くなります。2022年に行われた第20代大統領選挙の最終投票率は77.1%でした。
大統領は、韓国の行政府の長として国務総理の任命を行うことができ、軍の最高司令官としての地位も有しています。
大統領の執務室は、長い間、ソウル市の青瓦台にありましたが、尹錫悦大統領の就任とともに、2022年5月、ソウル市竜山区にある国防部庁舎内に移転されました。
青瓦台(청와대/チョンワデ)
青瓦台は、ソウル市の景福宮の近くにあり、2022年5月から市民に開放されています。韓国の立法制度と国会議員選挙
韓国の立法機関である国会は単院制であり、国会議員の任期は4年です。4年ごとに総選挙が行われ、満18歳以上の韓国子民が投票権を有しています。2020年に行われた第21代総選挙では議員定員は300名で、「共に民主党(더불어 민주당)」(当時の与党)が180議席、「未来統合党(미래통합당)」(現在の与党「国民の力」)が103議席を獲得し、現在、二大政党となっています。
2020年の選挙後、文在寅が所属する「共に民主党」が与党として多数議席を占めていましたが、2022年に尹錫悦が大統領に就任し、「国民の力(국민의 힘)」が与党となりました。このため、現在、与党が過半数議席を下回っており、厳しい政権運営を強いられています。
国会議事堂
1975年に完成しました。ソウル市の漢江の中洲である汝矣島(ヨイド)に位置しています。インターネットでの事前予約により観覧することもできます。韓国の司法制度
法院
裁判所を韓国語で「法院(법원/ポブォン)」と言い、韓国の司法制度は同一事件につき民事または刑事の審判を3回行うことができる三審制を、日本同様に採用しています。すなわち、地方法院や家庭法院が第一審を担い、その判決に不服がある場合には、高等法院に控訴することができます。さらに控訴審に不服がある場合は、大法院に上告することができます。
大法院は最高裁判所に相当し、大法院長は国会の同意を得て大統領が任命します。
【各法院の所在】
- 地方法院:ソウル特別市に4箇所、釜山、大邱、仁川、光州、大田、蔚山、水原、議政府、春川、昌原、清州、全州、済州
- 高等法院:ソウル特別市、光州広域市、大邱広域市、大田広域市、釜山広域市
- 大法院:ソウル特別市瑞草区
憲法裁判所
1988年に設置された裁判所で、憲法裁判所の長は国会の同意を得て裁判官の中から大統領が任命します。その役割は、主に「違憲法律裁判(法律が憲法に違反するかを審判)」と「弾劾法律裁判(大統領や国務総理などの非行に対して罷免するかを審判)」の2つがあります。
これまで2人の大統領に対して弾劾法律裁判がなされており、盧武鉉大統領は弾劾訴追が棄却(2004年)された一方、朴槿恵大統領に対しては弾劾訴追の決定(2017年)がなされました。
韓国の政治史:憲法改正と歴代大統領
韓国の政治体制は憲法によって定められ、1948年の憲法制定以来、これまで9度の憲法改正を経てきました。これにより韓国政治は6つの時代に区分され、その時代ごとの憲法を第1~第6憲法と言い、その各憲法に基づく政治体制を第1~6共和国と呼んでいます。憲法には、大統領の選出方法や任期、政治体制などが定められています。現在の第6憲法では大統領の重任を禁止していますが、過去には憲法を改正してまで重任する大統領もいました。
第1共和国(1948年~1960年)
- 憲法改正:第1次、第2次
- 大統領:李承晩(イ・スンマン)
- 特徴:独裁政治体制、単院制、直接選挙制
- 主な出来事:朝鮮戦争(1950~1953)、4・19革命(1960)
第2共和国(1960年~1962年)
- 憲法改正:第3次、第4次
- 大統領:尹潽善(ユン・ボソン)
- 特徴:二院制、議員内閣制
- 主な出来事:5・16軍事クーデター(1961)
第3共和国(1963年~1979年)
- 憲法改正:第5次、第6次
- 大統領:朴正熙(パク・チョンヒ)
- 特徴:国会単院制、大統領3選可(1969改憲)
- 主な出来事:日韓基本条約締結(1965)
第4共和国(1979年~1980年)
- 憲法改正:第7次
- 大統領:崔圭夏(臨時代行)
- 特徴:大統領の再選無制限、大統領間接選挙制
第5共和国(1980年~1988年)
- 憲法改正:第8次
- 大統領:全斗煥
- 特徴:軍政、大統領間接選挙制、大統領単期7年制
- 主な出来事:光州事件(1980)、民主化宣言(1987)、ソウルオリンピック(1988)
第6共和国(1988年~現在)
- 憲法改正:第9次
- 大統領:盧泰愚、金泳三、金大中、盧武鉉、李明博、朴槿恵、文在寅、尹錫悦
- 特徴:大統領直接選挙制、単期5年制、憲法裁判所の設置
- 主な出来事:日韓ワールドカップ(2002)、盧武鉉弾劾訴追(2004)、朴槿恵大統領罷免(2017)
韓国政治にまつわる主な歴史
1945年、終戦により日本の統治から解放(8月15日)、米国軍政へ。
1948年、憲法の制定、初代・李承晩大統領就任(第3代まで)、韓国政府の樹立(8月15日)
1950年、朝鮮戦争(1953年まで)
1961年、朴正熙を中心とした軍事クーデター
1963年、第5代・朴正熙大統領就任(第8代まで)
1965年、日韓基本条約締結
1979年、軍事クーデターで朴正熙大統領倒れる
1980年、第11代・全斗煥大統領就任(第12代まで)、光州事件(民主化運動)
1987年、現在の憲法(第6共和国憲法)が採択、民主化宣言
1988年、第13代・盧泰愚(ノ・テウ)大統領就任、憲法裁判所の設置、ソウルオリンピック開催
1993年、第14代・金泳三(キム・ヨンサム)大統領就任
1997年、IMF危機(韓国通貨危機、アジア通貨危機)
1998年、第15代・金大中(キム・デジュン)大統領就任
2000年、金大中ノーベル平和賞受賞
2003年、第16代・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領就任
2004年、盧武鉉大統領弾劾案可決
2008年、第17代・李明博(イ・ミョンバク)大統領就任
2013年、第18代・朴槿恵(パク・クネ)大統領就任
2014年、セウォル号沈没事故(4月16日)
2016年、崔順実ゲート、朴槿恵大統領弾劾案可決
2017年、朴槿恵大統領罷免、第19代・文在寅(ムン・ジェイン)大統領就任
2022年、第20代・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領就任
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