扶余(プヨ/부여、=扶餘)は、日本人にとって忘れることのできない、古き歴史を伝える王都があった地であることをご存じでしょうか。

扶余は、韓国ソウルから南方へ約140kmの地にあって、かつて6~7世紀に百済の最後の都「泗沘(サビ/사비)」のあった場所。20世紀以降に発掘作業が進み、現在、百済の城跡や寺院跡、王陵といった世界遺産を含む遺跡が点在しています。さらに博物館には、数多くの遺物を現在に伝え、国宝や重要文化財なども展示されています。

そんな百済は、かつて日本に仏教を伝え、日本と共に唐・新羅連合軍と戦い、滅びていった、日本人にとって大変縁の深い古代の国です。扶余では、そんな今はなき百済の歴史を感じることができます。

扶余へはソウルから高速バスに乗って約2時間ほどで行くことができます。日帰りの観光も可能ですが、しっかりと観光地を回るには1泊コースが良いかと思います。本記事では、そんな扶余に観光に行く前に知っておきたいことして、扶余の歴史や魅力、そして観光スポットについてお伝えします。


白馬江と遊覧船
IMG_6407

百済最後の都「扶余」はどんなところ?

扶余(プヨ/부여)郡は、韓国の忠清南道の南西部にある郡で、百済後期の首都があった歴史の町です。

その地は三方を白馬江(=錦江)という川に囲まれた平野部にあって、かつては百済の王宮や山城、寺院などがあり、王都は城壁に囲まれていたと言われます。そこは538年から660年まで、百済の6人の国王の時代において、泗沘(サビ)の都として栄えました。

しかし、百済は、660年、中国の唐と新羅の連合軍によって滅ぼされます。その3年後、百済と日本が共に戦ったのが白村江の戦いであり、その舞台となったのが白馬江の上流であったと推定されています。

扶余には、百済の末期および滅亡に関連する数多くの遺跡が残っています。百済の遺跡を巡っていると、かつて栄えた王国に想いを馳せ、想像力が掻き立てられるように思います。

なお、「扶余」という名称は、百済が滅びた後、統一新羅時代に扶余県という名称になってからのことのようです。さらに現在の地域が「扶余郡」となったのは、1914年であったとのことです。

近年、扶余は観光地になっていますが、急速度に過疎化して人口は減り続けています。


  • 名称:扶余郡(読み方:プヨぐん)
  • 面積:約634.9平方km
  • 人口:約6.6万人(2020年10月)
  • 編成:1つの邑(町)と15の面(村)
  • 鉄道(ITX):論山駅(扶余まで1時間弱)
  • 高速バス:扶余バスターミナルあり(ソウル南部ターミナルから約2時間)

扶余郡の位置
캡처


扶余に行く前に知っておきたいこと!

①王都に刻まれた百済最後の120年間の歴史

百済(ペクチェ/백제、くらだ)は、4世紀前半に朝鮮半島の南西部に起こった国で、もともと首都は、475年まで漢城(現在のソウル)にありました。しかし、その後、高句麗による北方からの攻撃により南へと遷都し、475~538年は熊津(現在の公州)に、538年から660年滅亡までは泗沘(現在の扶余)に首都があったと伝わっています。したがって、扶余の地には百済滅亡までの最後の120年間、王都であった歴史が刻まれています。

扶余には、多くの百済の遺跡が点在するほか、数々の遺物が国立扶余博物館に収められています。それらから、古代百済人が生きた歴史を感じ取ることができるようです。

576年当時の朝鮮半島の勢力図
437px-History_of_Korea_576_ja

②扶余を囲むように流れる白馬江(ペンマガン)

扶余の周りには、英語の「C」のような形に北東から南へと、ゆったりと大きな川が流れています。この川は、白馬江(ペンマガン/백마강、=錦江)と言います。現在は、遊覧船が出ており、川から陸地を眺める景色を楽しむことができます。

白馬江は百済とともにあった川。遷都前の熊津の都も、この川の上流にありました。さらに、この川のさらに下流で白村江の戦いが行われたと推定されています。

その後の時代も、扶余は水運の要所であって米の集散地としてにぎわったと伝わっています。

tour_jmap01
(原本はこちら)

③王都での激戦を思い偲ばせる数々の城跡

扶余は、三方が川に囲まれているため外敵からの防御に適しており、その中心部には、かつて「泗沘城」があり、その城の背後に川岸に面して扶蘇山城(プソサンソン/부소산성)があったと言います。この扶蘇山は海抜94メートルの丘陵であって、現在は登山をしながら、山中に点在する施設や城跡などを見学することができます。

さらに扶余の都には、かつて都の外郭を取り囲むように「羅城」と言われる城壁で守られていました。現在、その一部の区間が復元されています。

④落花岩の身投げの悲しい伝説

唐と新羅に攻められた百済の貴族や宮女たちは、扶蘇山城の頂上近くにある落花岩(ナッカアム)から崖の下を流れる白馬江へと身を投じたという伝説が伝わっています。このとき、3000人もの官女が投身したとも言われます。

落花岩はまさに悲しい伝説ですが、そこまで登っていって白馬江を眺める景色は大変絶景です。また、落花岩の下の辺りには、皐蘭寺(コランサ、고란사)という小さな古寺があり、そこでは亡くなった霊を慰めたとも言われます。落花岩と皐蘭寺へは、遊覧船に乗っても行くことができます。
落花岩の上にある「百花亭」
IMG_6438

⑤百済王たちの夢の跡

扶蘇山城の南麓には、泗沘城や王宮があったと言われますが、現在は、広大な跡地のみが残っています。さらにその南側にはかつて離宮があって、現在はその離宮の池の庭園「宮南池(クンナムジ/궁남지)」が復元されていますので、ここは扶余の必須コースと言えるでしょう。

さらに扶余中心部から少し東方へ行ったところには、百済王族が眠る古墳群があります。

宮南池
IMG_6370

⑥百済後期の仏教文化が宿る寺院跡

中国から百済への仏教公伝は、4世紀終わり頃の384年と言われており、熊津と泗沘の都があった現在の公州と扶余には、百済後期の仏教にまつわる多くの遺跡や物品が発見されています。

また、扶余には、その王都時代の中心的寺院であった定林寺址(チョンニムサジ/정림사지)<が、20世紀に入ってから発掘されています。この寺院跡の敷地内には、国宝の五層石塔が残っています。さらにその敷地のすぐ横には定林寺址博物館も設置され、定林寺の歴史・建築様式・文物などを伝えています。

百済の仏教は日本にも伝わりました。このため、定林寺址を歩いていると、日本の古代仏教の息吹が感じられるように思います。

IMG_6475

⑦国宝「金剛大香炉」

百済滅亡のとき、井戸に投げ込まれたまま眠っていた宝が、時を経て現代に蘇りました。それが国立扶余博物館に所蔵されている国宝「金剛大香炉」です。

保存状態が良かったせいか、百済当時の姿がそのまま迫ってかるようで、国宝と言われて納得します。「金剛大香炉」は、まさに扶余のシンボルと言ってもよく、扶余へ入る道路ではこの大香炉の大きなレプリカが出迎えてくれたりします。

国宝「金剛大香炉」
IMG_6353

⑧扶余の定番グルメは「蓮の葉ご飯」!

扶余に行ったら一度は食べておきたいのが、蓮の葉ご飯(ヨニッパッ/연잎밥)です。蓮の葉に包まれたもち米のご飯を、韓定食の数々のおかずともに楽しむ、扶余の定番メニューで、いくつかのお店があります。

<というのも、扶余は仏教の都らしく、宮南池をぐるっと囲うたくさんの池は、蓮の葉で覆い尽くされています。博物館に行けば、蓮の葉の模様が刻まれた瓦など、数々の“蓮の葉文化財”に出会うことでしょう!

蓮の葉ご飯
IMG_6340


扶余の観光スポット・ツアー・イベント

扶余の観光地図はこちら→リンク
扶余のコネスト地図はこちら→リンク

扶余中心部

  • 国立扶余博物館 :百済にまつわる数々の文化財や遺物を展示(→公式サイト(日本語))
  • 扶蘇山城: 百済の山城があった一帯。南側一帯に王宮址があり、北側に川に面して落花岩・皐蘭寺(コランサ、고란사)がある
  • 薯童公園(ソドンこうえん、서동공원)/宮南池(クンナムジ、궁남지):南の離宮に作られた池の庭園
  • 定林寺址(정림사지):扶余王都時代の中心的寺院の跡地。現存する国宝の五層石塔(世界遺産)が見どころ。定林寺址博物館が併設されている(→公式サイト(一部日本語ページあり))
  • 白馬江遊覧船:皐蘭寺・落花岩行き(片道または往復)
  • 扶余羅城:王都を囲む城郭
  • 扶余王陵園:百済王たちの王陵

扶余西部

  • 百済文化団地:百済文化が体験出来るテーマパーク。2006年開業
  • ロッテアウトレット
  • 人参博物館:韓国を代表する高麗人参ブランド「正官庄(ジョングァンジャン/정관장)」の工場に併設された博物館
  • 薯童謡(ソドンヨ)テーマパーク:大河ドラマ『薯童謡(ソドンヨ)』撮影地

ツアーバス

  • 扶余シティツアーバス:扶余の主要観光地を回る水陸両用のツアーバス。事前予約可(→公式サイト(韓国語))

百済文化祭(10月)

百済の都であった扶余と公州が、交互に毎年10月6日から9日まで開催しています。


扶余への行き方

ソウル(南部ターミナル、東ソウルターミナル)から高速バスを利用するルートや、韓国高速鉄道(KTX)を利用して論山駅でバスに乗り換えるルートがあります。

扶余のお勧めサイト

コネスト
観光スポット・グルメ・ホテルの紹介、地図やアクセスのほか、ツアーの予約も。

ソウルナビ
観光スポット・グルメ・ホテルの紹介、地図やアクセスなど。

にこまるツアー

扶余郡公式サイト(日本語)

その他の参考サイト



ブログランキングに参加中です!
↓のリンクを1日1回ポチっと応援して頂けると、ランキングに反映され嬉しいです。

にほんブログ村 海外生活ブログ 韓国情報へ
にほんブログ村