日本で平安時代(794年~1185年頃)が始まった頃、朝鮮半島は統一新羅の王朝が統治していました。そんな新羅(前57年~935年)の千年の都があった場所、それが今回紹介する慶州(キョンジュ)です。
韓国の南東に位置する慶州は、新羅時代の宮殿や仏教寺院、遺跡などが点在し、世界遺産も多い韓国を代表する歴史的観光地です。その一方で、遊園地やレジャー施設、宿泊施設が集中した普門湖のリゾートエリアもあります。東の海岸沿いでは、海水浴や天然の景観を楽しむこともできます。
そんな見どころ満載の慶州は、主なスポットを回るだけでも、2泊・3泊は必要になります。釜山からのアクセスが良く、ソウルからはKTXに乗って2時間ちょっとで行くことができます。
今回の記事は、そんな慶州に観光に行く前に知っておきたいことして、慶州の魅力や見どころと歴史、そして観光スポットについてもまとめてお伝えします。
【目次】
かつての新羅の都の姿(模型)
(原本へのリンク)
「慶州」はどんなところ?
慶州(경주/キョンジュ)は、慶尚北道の最南東にあって、山間の盆地にある歴史的な観光の街です。かつて新羅(しらぎ、신라/シルラ)の王都が置かれていた場所です。新羅は、紀元前57年に建国されました。慶州には6つの村があり、卵から王が生まれ出たという建国神話が残されています。朝鮮半島には、その後も長い間、高句麗、百済、新羅の三国が鼎立していました。新羅が朝鮮半島に統一王朝を打ち立てるのは、676年になってのことです。新羅は935年に滅びるまで、992年間にわたって続き、最初から最後まで慶州が首都でした。
その都はどんなところだったのでしょうか。新羅は仏教文化が栄えた王国だったため、慶州には王族がいる城、宮殿、寺院などが多くありました。新羅には56代にわたる王たちが即位し、その中には3人の女王も含まれていました。その都は「金星(금성/クムソン)」や「徐羅伐(서라벌이/ソラボル)」と呼ばれていたと言います。
その後、新羅を滅ぼした高麗によって、935年に「慶州」という名に改められました。その後も幾度かの名前の変遷がありましたが、朝鮮時代以降は「慶州郡」とされていたようです。
ただし新羅が滅びた後、その王都のあった場所はモンゴルの襲来などによって荒廃し、その一帯は田園になっていたと言います。その場所は、現在の慶州駅のある市街地から少し離れた南東方面にありました。現在、そこは「慶州歴史地域」と呼ばれて、宮殿や歴史的施設などが復元されており、通称「屋根のない博物館」として一大観光スポットになっています。
その他にも、慶州には東方に普門(ポムン)リゾートという遊びのエリアがあり、その近くの山中には、世界遺産である「仏国寺」と「石窟庵」があります。
さらに慶州で忘れていけないのは、東海岸沿いの海のスポットです。自然の織り成す壮大な景観を楽しむことができ、新羅時代のスポットとしても「文武大王陵」があります。
慶州は韓国の京都と言われることもありますが、慶州には慶州ならではの魅力があると思います。
- 名称:慶州市(読み方:キョンジュし)
- 面積:約1,324平方km(→コネスト地図)
- 人口:約25.2万人(2021年12月)
- 編成:4つの邑(町)と8つの(村)と11の洞(町丁)
- 鉄道(KTX):新慶州駅(ソウル駅から約2時間10分)
- 鉄道:慶州駅
- 高速バス:慶州高速バスターミナルあり(ソウルから約3時間半)
- 空港:なし(最寄りは浦項空港および蔚山空港)
慶州に行く前に知っておきたいこと!
①新羅の王都を思い忍ばせる「慶州歴史地域」
新羅ははるか昔に滅びた国であるため、長い間、その王都の姿は失われていました。その王都の場所にあった遺跡群を、近年の発掘作業を経て復元したのが「慶州歴史地域」です。この一帯は、新羅の歴史を代表する観光地で、新羅の城跡「半月城」、宮殿「東宮と月池」、天文台「瞻星台」、新羅王の古墳群「大陵苑」などの歴史的史跡が見どころです。国立慶州博物館もこのエリアにあります。
このエリアは「慶州歴史遺跡地区」として、2000年に世界遺産に登録されました。今後もさまざまな復元計画があります。日が沈むと主要な建造物が幻想的にライトアップされ、現代的な夜景が楽しめるの魅力です。
このエリアは、市街のある慶州駅の南東方面にあり、KTXの新慶州駅からもタクシーに乗って20分ほどの距離に位置しています。慶州観光に外すことはできないエリアと言えるでしょう。
宮殿「東宮と月池」
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②世界遺産「仏国寺」と「石窟庵」
新羅とは仏教の国。そんな慶州で見ておくべきスポットとして必ず挙げられるのが「仏国寺」と「石窟庵」です。慶州市街の東側の郊外に位置し、市内バスターミナルからのバスが出ています。仏国寺は、8世紀に造られたと伝わる山中の仏教寺院で、石材で出来た建造物や石塔の荘厳とした姿が非常に印象的です。
石窟庵も、8世紀に造られたと言われ、仏国寺よりも山中に入ったところにあります。山の斜面位置する石窟の中央に仏像が配置されれた小さな寺院ですが、自然に溶け入っていて不思議な感じがあります。
1995年に「石窟庵と仏国寺」と名称で韓国初の世界遺産に登録されました。
仏国寺
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③普門(ポムン)リゾートは遊びのエリア!
慶州には、市街地の東へ車で20分ほど行くと、普門湖を中心とした遊びのエリアがあります。1970年代に観光目的で造成されたこの人工の湖では、遊覧船に乗れるほか、水際の遊歩道を散策することができ、春には桜の名所として知られています。湖の周りには自転車専用道路も設けられていますので、時間に余裕があれば、レンタルして一周しても良いかもしれません。
景観のいいこのエリアには、数多くのホテルが立地し、遊園地やウォーターパーク、美術館や公園などのスポットが集中しています。
このエリアからは石窟庵と仏国寺へのアクセスも良いです。
普門観光団地の展望
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④ドラマにもなった「善徳女王」
新羅王朝の歴史と言っても日本人にはよくわからないと思いますが、新羅王の中で一人を紹介するとしたら、新羅初の女王であった善徳女王(선덕여왕/ソンドッヨワン)です(在位期間:632年~647年)。2009年には、この女王の生涯を描いたドラマ『善徳女王』が韓国で放送され、43.6%という驚異的な視聴率を残しました。善徳女王は、呪術を使い予知能力を持つシャーマン的な人物だったと言われており、卑弥呼のイメージに重なりますね。
慶州には、善徳女王にまつわるスポットがいくつかあります。慶州歴史地域には善徳女王陵がありますし、東洋最古の天文台「瞻星台」も善徳女王の時に造られたと伝わっています。普門湖の畔には、善徳女王公園も造られています。
善徳女王の肖像画

(原本へのリンク)
⑤慶州の海もお忘れなく!
慶州は、東海岸が南北に20数kmにわたって海に面しており、いくつかの港や海水浴場、そして景観に優れた岩石海岸などが点在しています。歴史的なスポットとしては、新羅の第30代王である文武大王(在位)が葬られたとされる海上の「文武大王陵」があります。沖合に浮かぶ天然の大岩がその場所であり、王の生前の言葉のとおり、死してなお龍として国を守っているのだそうです。
海に面した壮大な岩場の景観を楽しむには、柱状節理も大変お勧めです。「波の音道(パラムソリキル)」と名付けられた全長1.7kmの海外沿いの歩行路が歩いていくことができます。はるか昔にマグマが冷却される中でできたとされるのが柱状節理であり、非常に変わった形をした岩場の海岸地形を眺めることができます。
その他にも、慶州の海にはさまざまなスポットがあります。
文武大王陵
(原本へのリンク)
⑥両班の村「良洞民俗村」
慶州と言えば新羅の文化というイメージになりますが、慶州市街より北へ25kmほど行くと、朝鮮時代のスポットである良洞民俗村があります。韓国を代表する伝統民俗村であり、朝鮮時代より600年間にもわたり、両班階級の一族が住んでいた場所です。この場所も、安東河回村と共に「大韓民国の歴史的村落:河回と良洞」として2010年に世界遺産に登録されています。日程に余裕のある方は行ってみても良いと思います。
良洞民俗村
(原本へのリンク)
⑦慶州地震
観光とは直接関係はありませんが、慶州と言えば、2016年9月12日に起きた地震が思い出されます。地震に縁がないと思われていた韓国で、慶州を震源とするマグネチュード5規模の地震が発生し、韓国で地震防災の意識を高めるきっかけとなりました。
慶州の観光スポット
慶州観光地図はこちら。慶州中心部(市街および歴史地区)
- 瞻星台(チョムソンデ):東洋最古の天文台(国宝)
- 月精橋(ウォルジョンギョ):新羅の愛の物語にまつわる木製の橋
- 半月城(パノォルソン):新羅時代の城跡。半円状の敷地だった
- 鶏林(ケリム):慶州金氏の始祖・閼智(アルチ)が生まれた地と言われる樹林
- 東宮と月池(旧雁鴨池/アナッチ):新羅時代最大の人工池と宮殿
- 大陵苑(テヌンウォン):新羅王の古墳が点在する広大な公園。「天馬塚(チョンマチョン)」は必見
- 国立慶州博物館:慶州を代表する博物館
- 慶州校村マウル:朝鮮時代の小さな民俗村
- 中央市場:市街にある市場
- 金庾信(キム・ユシン)将軍廟:新羅の英雄が眠る墓
普門(ポムン)リゾートエリア
- 普門湖:散策ができる人工湖。遊覧船やボートが楽しめ、周りには自転車専用道路も設置されている
- 新羅ミレニアムパーク:新羅の歴史体験ができるテーマパーク
- 慶州世界文化エキスポ公園:慶州市主催の「慶州世界文化エキスポ」が行われる公園
- 慶州ワールド:普門湖の畔にある遊園地(公式サイト)
- 慶州東宮院(トングンウォン):植物園やバードパークがある
- 水車の広場:直徑13メートルの巨大水車
- アート善載(ソンジェ)美術館:現代アートを見学できる美術館
- ブルーワン:巨大津波を体験できるウォーターパーク
石窟庵と仏国寺
- 仏国寺(プルグッサ):新羅時代の仏教寺院
- 石窟庵(ソックラム):山中の岩窟にある小さなの寺院
- 慶州民俗工芸村:たくさんの伝統工房が見学でき、歴史博物館がある
海岸エリア
→参考リンク- 塩洞(ヨンドン)港と塩洞漁村体験村:慶州の北西端にある港町のスポット
- 五柳ゴアラ海岸:海水浴場やキャンプ場あり
- 甘浦(カンポ)港:海上公園があり、三層石塔を模した灯台がシンボル
- 典村(ジョンチョン)港:龍が住んでいたと伝わる自然の岩窟「龍窟」が見どころ
- 利見台(イギョンデ):海上に浮かぶ「文武大王陵」を眺めることができるとともに、護国寺院「感恩寺址」が残る
- 羅児(ナイ)海岸:原発関連の展示をしている「月城原子力広報館」や、昔脱解(ソッタレ)王の物語を味わるテーマ道「脱解王道」が見どころ
- 柱状節理(주상절리):海岸に沿って全長1.7kmの「波の音道(パラムソリキル)」を歩くと、天然の奇岩を見物できる。途中に展望台もある
- 邑川(ウプチョン)港と壁画村:大学生や作家が集まって描いた壁画を見学できる
- 栗浦ジンリ港とクァンソン松原海岸:大型の鍵のオブジェ「愛の鍵」がシンボルで、近くに松林がたたずむ海岸がある
慶州北部
- 良洞民俗村:李朝時代からの両班の同族集落
- 玉山書院(オッサンソウォン):儒教の教育機関だった建物
- 独楽堂(ドンナクダン):朝鮮時代の儒学者の隠居
慶州のお勧めサイト
慶州市ホームページ(日本語)慶州旅行(公式、日本語)
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