『朝鮮王朝実録』は、李氏朝鮮王朝の当時の歴史をありのままに記録した歴史書です。韓国の歴史ドラマは、かなりの脚色がなされているといわれますが、その史実は、この実録に記録されているといってよいかと思います。

現在、朝鮮王朝実録はソウル大学などに保管されており、インターネットでもハングル翻訳文を読むことができます。

ところで、朝鮮王朝実録には、何がどのように記録され、その歴史本はどのように保管されて、現在まで残されてきたのでしょうか。

今回、朝鮮王朝の歴史書『朝鮮王朝実録』について調べまとめてみましたので、関心のある方はご参考ください!


朝鮮王朝実録の原本
실록
(原本へのリンク)


朝鮮王朝実録とは?何が書かれているの?

『朝鮮王朝実録』は、李氏朝鮮王朝(1392年~1910年)の27代にわたる歴代の王たちの実録を記録した歴史書です。実録というのは、王たちが実際に生きた当時の事実をありのままに記録したものです。

このため、朝鮮王朝には、朝鮮王の言行などの実録を記録するための春秋館(チュンチュグァン/춘추관)という行政機関が置かれ、そこに専門の士官が配されてました。

実録は儒教文化に基づくもので、日本でも江戸時代には、通称『徳川実紀』といわれる江戸幕府の公式史書があったようです。そうした各国の実録の中でも、朝鮮王朝実録は、記録の真実性と信憑性が非常に高いといわれ、子孫の王たちも見ることができないという原則が貫かれてきたといいます。

さらに一つの王朝の歴史的記録としては、世界で最も長い時期を扱っている歴史書でもあり、李氏朝鮮時代の政治、外交、軍事、経済などの多方面の史料が記載されています。

以上のような点が認められて、朝鮮王朝実録は、1997年にはユネスコ世界記憶遺産に指定されています。


朝鮮王朝実録は誰がどうやって記録・編纂したのか?


王の在位期間の記録

朝鮮には、高麗(918年~1392年)の時代から『高麗実録』があり、高麗の建国時から春秋館という実録編纂のための行政機関がありました。これが李氏朝鮮王朝にも受け継がれます。

春秋館に属する士官たちは、歴代の王たちに付き従いながら、王と周辺官僚の行動をもれなく記録しました。この書物を「史草(사초/サチョ)」といいました。

さらに春秋館の士官たちは、3年ごとに自分たちが作成した史草と各官庁の記録物を年月順に集めて「時政記(시정기/シジョンギ)」を編纂しました。これが実録の基本資料となります。

史草と時政記は王も見ることのできない非公開文書であり、朝鮮時代の歴代の王の中で自身の史草を読んだ王はほとんどいなかったといいます。

王の死去後の実録編纂

王が死去すると、その次に王位に上った現職王は、春秋館の士官などを配した実録庁を臨時に設置し、史草・時政記や、承政院日記などの各官庁の記録を集めて、前王の実録を編纂しました。

編纂の過程は、初草、中草、正草という3段階で進められ、最後に文章が統一された正草によって実録が完成しました。

完成した実録は複製されて、1部を春秋館に置き、残りを各地方にある史庫に1部ずつ保管されました。

そして最後に実録庁は、史草や、初草と中草を破棄する「洗草」を行いました。


朝鮮王朝実録はどこに保管されている?

朝鮮王朝実録は、各代の王の実録編纂を終えるたびに、首都・漢城(現ソウル)の春秋館と、地方3~4か所の史庫に、それぞれ1部ずつ保管されてきました。そのようにして各所に保管された朝鮮王朝実録は、中には紛失したものもありましたが、原本が現在もそのまま残されています。

文禄・慶長の役(1592年、1598年)の際には、豊臣軍の攻撃や火災によって多くの実録は失われ、全州(ジョンジュ)の史庫にあった実録だけが残されて後世に伝えられたといいます。

その後、1603年(宣祖36年)には、実録の再刊行作業が行われて、残った原本1部を含めて5部の実録を、再び春秋館と、各地方にある4つの山中の史庫に保管しました。

こうして残されてきた朝鮮王朝実録は、日本植民地の時代に、東京帝国大学に寄贈されたものや、失われたものもありました。現在は、朝鮮王朝実録のうち1部はソウル大学の中央図書館に、1部は韓国政府により釜山の記録保存所に保管されており、北朝鮮に渡ったものも1部あるようです。



朝鮮王朝実録を読むには?


朝鮮王朝実録の翻訳文(韓国語と英語)

朝鮮王朝実録は、原文は漢文ですが、現代の韓国人も読めるようにハングルにも翻訳されて、1993年に翻訳が完了されました。そのハングル版を毎日100ページずつ読んでも、すべてを読破するのに4年半の歳月がかかるといわれています。

さらに英語への翻訳も進められ、2017年に、世宗実録の一部分を、記念すべき英訳本第1巻として発刊しました(参考記事(韓国語))

インターネットでの朝鮮王朝実録の読み方

朝鮮王朝実録は、電子化も進められ、2005年に国民向けオンラインサービス事業を開始しました。

国史編纂委員会で運営している以下のサイト(リンク)から、韓国語と漢文の朝鮮王朝実録を読むことができます。年月日別に内容を閲覧できるほか、ワードでの検索機能も提供しています。

조선사이트


参考文献

  • ナムウィキ(韓国語)「朝鮮王朝実録
  • Wikipedea「実録」
  • 韓国民俗文化大百科事典「時政記/都廳/洗草」





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